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建築費の高騰が不動産マーケットにもたらす「好影響」を考える/楽待

2024/02/15 不動産投資

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今後のマーケットの成長を享受していくチャンスの到来

建築費の高騰が不動産マーケットに与える影響

PHOTO:hide/PIXTA

 

 

東京の街を歩き回ると、建設用のクレーンがそこかしこに林立している。都心部は超高層オフィスやホテル、商業施設の工事がここかしこで進行中。鉄道主要駅の駅前を中心にタワマン建設の槌音も響く。

 

昨今の建設需要の盛り上がりで一見して活況を呈しているかのように見える不動産・建設業界だが、最近彼らの顔が曇りがちだ。

 

原因は上がり続ける建築費だ。今回は、建築費の高騰が不動産マーケットに与える影響について考えてみたい。

 

 

 

上昇続く建設費

 

国土交通省が発表する「建設工事費デフレーター(2015年度を100とした指数)」によれば、2023年10月現在の指数は、建築総合分野で123.5を示している。コロナ禍が始まる20年2月段階では108.2であったから、コロナ以降に大幅に上昇したことがわかる。

 

私自身、いくつかの不動産開発計画に携わっているが、現場感覚でいえばここ2~3年で3割から4割程度は上がった印象だ。理由は次の5つだ。

 

 

1.建築資材の高騰

1つ目は、建物を建設する際の「建築資材の高騰」だ。オフィス建設などに必要な鉄骨、住宅用の木材などは世界的な建設需要の高まりもあってひっ迫している。

 

最近の大規模建物に使われる外装・内装材の多くが海外品だ。外壁に使う花崗石製品、アルミカーテンウォール、内装の大理石、造作家具などに至るまで、多くが日本は海外からの輸入に頼っている。

 

コロナ禍以降世界的な金融緩和と、東アジア、東南アジアの経済発展で建築資材がひっ迫している。世界的なインフレ傾向は輸入材に頼る国内の建築費の値上がりにおおいに影響を与えているのだ。

 

 

2.エネルギーコストの高騰

 

2つ目が、ウクライナ紛争などに伴う「エネルギーコストの高騰」だ。原油価格の高騰は輸送コストや電気代の上昇を招いている。エネルギーは建築資材の製造や物流などすべての面でコストアップの要因となる。

 

 

3.半導体不足

 

3つ目は世界的な「半導体不足」だ。建設の世界でもエアコンや照明装置、給湯器や床暖房といった設備に半導体は多く使われている。

 

建物ができあがっても設備が入らないのでは稼働ができない。設備系のコストアップも全体の建築費の上昇に寄与しているのである。

 

 

4.円安


4つ目が「円安」だ。輸入材が多いということは、昨今の円安がこれら資材の調達コストをさらに引き上げる原因となっているということが挙げられる。

 

先進国の中で日本だけが低金利という一人旅を続けているが、内外金利差は為替安を招く結果、輸入資材価格は為替分、さらに上乗せされることになるのだ。

 

 

5.人件費の高騰

 

そして最後が、日本固有の要因「人件費の高騰」である。建設業に従事する人の数は1997年の685万人をピークに下がり続け、2022年には479万人。25年間で実に30%も減少している。

 

特に鉄筋工や型枠工といった専門技術を必要とする職種はベテラン作業員の高齢化による退職が相次いでおり、人数のみならず年齢構成や職能によるバランスが保てなくなっている、人工不足は人件費の高騰を招く。

 

これらに加えて、2024年度からは建設業においても時間外労働の規制や週休2日制の導入など働き方改革が実施される。工期の延長やただでさえ少ない人工のやりくりを負わされる建設業にとっては、茨の道が続くのである。

 

 

 

オフィスビルにも問題が波及

 

建築費の高騰はいろいろなところに波及する。マンションを建設して分譲販売する業者にとっては、商品原価の高騰を販売価格に転嫁しなければならない。

 

首都圏における新築マンション平均価格は2022年で6288万円。15年前の2007年4644万円に比べ35.4%の上昇だ。1平米当たりの単価でいえば54.9%もの大幅な値上がりになっている。もはや一般庶民では到底手が届かない代物になってしまったのが新築マンションだ。

 

影響はマンションばかりではない。都内で建設されるオフィスビルも同様だ。

 

 

PHOTO:まちゃー/PIXTA

 

 

高い賃料が見込める都心部の大規模ビルであれば、予想する賃料収入で建設費を賄うことができるだろう。

 

しかし、新橋や神田などに多数ある中小ビルは、築年が経過して建替えようにも、現状の建築費では、土地代を加味しなくても、予想する賃料水準では到底投資資金を回収できない水準になってきている。

 

最近はコロナ禍以降のテレワークの定着や大規模オフィスの大量供給によって空室率が高止まり、さらには賃料水準も3年間にわたって下落し続けているため、今後は大規模オフィス建設にも影響が出てきそうだ。

 

賃貸マンション建設においても、現状の建築費ではテナントの賃料を1坪あたり1万5000円から1万7000円に設定しないと、投資資金の回収が20年以上かかってしまう。この坪単価でいえば、1Kと呼ばれる8坪(26平米)程度の部屋で12万円から14万円になる。大企業などに勤める高収入のテナントでなければ借りられる水準ではない。

 

こうした流れは鉄道ターミナル駅前や地方主要都市で数多く行われている再開発事業にも影響が及んでいる。

 

昨年、名古屋市栄地区にある名古屋三越栄店が入居するビルの建替え計画の凍結が発表された。理由は、建築費の高騰とオフィスマーケットの先行き不安によるものとされる。

 

 

PHOTO:天空のジュピター/PIXTA

 

 

また、2030年末の北海道新幹線の札幌延伸を見込んで計画されていたJR札幌駅南口の再開発ビルについて、事業主であるJR北海道が資材高騰と人件費上昇を原因とした数百億円の事業費増を理由に、工期の延長や事業規模の縮小に入った。

 

同じ札幌駅前の札幌西武跡地の再開発計画では地上35階を31階に縮小、ホテル部分の誘致を断念するに至っている。

 

市街地再開発事業は、道路や公園、公共施設などの整備を目的に容積率の割り増しを認め、地域の高度利用を促進するための事業で、自治体などの補助金が投入される開発モデルだ。

 

最近では、容積割り増し部分の床(マンションやオフィス)を買い取る業者が現れず、自治体自らが補助金に加えて床を買い取る事例も水戸市や神戸市、岡山市、和歌山市などで起こっている。

 

建築費の高騰で保留床と呼ばれる割り増し部分の床の価格が高騰し、デベロッパー側の採算が合わなくなっているのである。

 

 

 

富裕層向け事業に活路も

 

さて、こうした事態になると、今後は新築計画の延期や凍結、断念が続くことが予想される。

 

通常であれば、建築費が下がるのを待つということになるのだが、建築費が下がる要素は今のところ見当たらない。なぜなら海外資材中心の原材料価格も国内労働力の劣化による人件費の高騰は今後も強まることがあっても弱まる可能性は期待できないからだ。

 

それでも何とか商売をしていくためには方策がある。富裕層だけを相手にした不動産事業だ。

 

ホテル建築にしても、外資系5つ星クラスのホテルであれば、宿泊料は1泊10万円以上が見込める。顧客から得る宿泊料や多額の飲食費で投資資金の回収可能性は高まる。つまり、一定の投資利回りが確保できるのだ。

 

マンションも1戸2億円3億円といった超高級マンションは、国内外の富裕層には大人気でよく売れている。オフィスも都心超一等地にオフィスを構えるステータスに対して多額の賃料を払うテナントはいる。

 

 

 

建築費高騰も、賃料アップで不動産投資には好影響

 

賃貸マンションも普及帯で苦戦するも、月額20万円以上する好立地の高級賃貸マンションの稼働は、総じて高い傾向にある。

 

また大企業を中心として賃金の引上げが相次ぐ中、独身社員向けのワンルームマンションでは、月額10万円の壁を突破しても入居者がつく事例も出始めている。

 

したがって不動産投資を行うにあたって、現在の建築費の高騰は悩ましい問題であるいっぽうで、インフレ傾向が強まることは賃料水準の引き上げの可能性を高めることにつながっていることはポジティブに捉えるべきだ。

 

特に中古賃貸マンションにおいては、建築費高騰の影響はリニューアルコストの上昇など一部にとどまり、インフレ進行に伴う諸物価の高騰の恩恵は、やがては賃料に好影響をもたらすと考えてよい。

 

今の時点はいわば、いったん下落した投資利回りが均衡点に戻る端境期にあると言ってよく、今後のマーケットの成長を享受していくチャンスの到来といえるのである。

 

(牧野知弘)

 

 

 

 

 

引用元:【建築費の高騰が不動産マーケットにもたらす「好影響」を考える |楽待不動産投資新聞 (rakumachi.jp)

 

 

 

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